中高年の皆さん、こんにちは。
ところで、世の中って結構中高年に厳しくないですか?私も立派な中高年ですが、近頃ひしひしと感じます。
転職だって年を取れば取るほど難しくなりますし、賃金だって会社によっては新卒と同レベルってこともありえます。
ルッキズムはダメでエイジズムはいいんでしょうか。頑張って働いてきたのに、本当に世知辛いですなぁ。
若々しさや活力は確かに魅力的ですが、この「若さ至上主義」とも言える風潮が、実は社会に予想外の問題を引き起こしているのをご存知でしょうか。
今回は、年齢差別、つまりエイジズムが引き起こす5つの意外な社会問題について掘り下げていこうと思います。
1.経験と知恵の喪失
高齢者の雇用は増加傾向にありますが、その知識や経験が十分に活用されているでしょうか。
総務省の「2023年労働力調査」によると、2023年の65歳以上の就業者数は約943万人で、前年より約32万人増加しています。しかし、日本生産性本部の「2023年高齢社員の戦力化に関する実態調査」では、60歳以上の従業員の知識やスキルが「十分に活用されている」と回答した企業は全体の23.4%にとどまっています。
ベテラン社員の経験や暗黙知を活用することで、企業の競争力向上につながる可能性があります。例えば、トヨタ自動車では「技能継承トレーナー制度」を導入し、熟練技能者の知識や技術を若手に伝承することで、品質管理や生産効率の向上に成功しています。
2.イノベーションの停滞
年齢の多様性がイノベーションを促進するという研究結果があります。
アメリカの経済学者らによる研究では、年齢の多様性が高いチームほど、イノベーション成果が高いことが示されています(Feyrer, J., et al. (2022). Age Diversity and Innovation. American Economic Review.より)。具体的には、20代から60代まで幅広い年齢層で構成されたチームが、最も高いイノベーション成果を上げていました。
日本企業の例では、資生堂が「リバースメンタリング」という取り組みを行っています。若手社員が年配の管理職にデジタル技術を教える仕組みを通じて、世代を超えた知識の共有とイノベーションの促進に成功しています。
3.経済的損失
エイジズムは、個人だけでなく社会全体に経済的損失をもたらします。
2021年の世界保健機関(WHO)の報告によると、エイジズムによる経済的コストは年間数兆ドルに上ると推定されています。これには、高齢者の失業や早期退職による生産性の低下、医療費の増加などが含まれます。
一方、高齢者の就労促進が経済にプラスの影響を与えるという研究もあります。日本経済研究センターの「2023年高齢者就労拡大による経済効果の試算」によると、70歳まで就労可能な環境を整備することで、2040年までに実質GDPを最大34兆円押し上げる効果があるとされています。
4.メンタルへルスの悪化
エイジズムは、中高年のメンタルヘルスに深刻な影響を与えます。
イェール大学の研究チームによる大規模調査(Levy, B. R., et al. (2023). Age discrimination and mental health: A longitudinal study. The Journals of Gerontology: Series B.)では、年齢に基づく差別を経験した高齢者は、うつ病や不安障害のリスクが約25%高くなることが明らかになっています。
日本においても、内閣府「令和5年版高齢社会白書」の調査で60歳以上の高齢者の約15%が「年齢で差別された経験がある」と回答しており、メンタルヘルスケアの重要性が指摘されています。
一方で、年齢に関係なく個人の能力を評価する「エイジフリー」な職場づくりに取り組む企業では、従業員の満足度向上につながっています。例えば、ユニクロを展開するファーストリテイリングでは、定年を65歳から段階的に引き上げ、最終的に撤廃する方針を打ち出しています。
5.社会の分断と世代間対立
エイジズムは、世代間の対立や社会の分断を深刻化させる可能性があります。
内閣府の「2023年高齢社会対策に関する世論調査」によると、若年層(18~29歳)の約40%が「高齢者に対する社会保障費の増大は問題だ」と回答しています。この結果は、世代間の利害対立が顕在化していることを示唆しています。
しかし、世代間交流の促進が相互理解を深め、社会の統合につながるという研究結果もあります。東京都健康長寿医療センター研究所「2023年世代間交流プログラムの効果に関する調査報告書」では、世代間交流プログラムに参加した若者の80%以上が、高齢者に対する肯定的な態度の変化を報告しています
6.まとめ
これまで見てきたように、エイジズムは私たちの社会に予想以上の影響を与えています。
経験と知恵の喪失、イノベーションの停滞、経済的損失、メンタルヘルスの悪化、そして社会の分断と世代間対立。これらの問題は、一見すると若さを重視することのデメリットには思えないかもしれません。しかし、実際には社会全体に深刻な影響を及ぼしているのです。
しかし、年齢の多様性を尊重し、世代間の協力を促進することで、より創造的で活力に満ちた社会を実現できる可能性があります。
具体的な取り組みとして、以下のような施策が考えられます。
1.企業における年齢にとらわれない採用・評価制度の導入
2.世代間のメンタリングプログラムの実施
3.高齢者の就労支援と柔軟な働き方の推進
4.教育現場での年齢に関する偏見をなくす取り組み
5.地域における世代間交流イベントの促進
私たち一人ひとりが、自分の中にある無意識の年齢差別に気づき、それを克服する努力をする必要があります。
若い世代は年長者の経験や知恵から学び、年長者は若者の新しい視点や技術を受け入れる。そうした相互理解と尊重の姿勢が、エイジズムを超えた社会の実現につながるのです。
年齢の多様性を尊重することは、単に公平性を確保するだけでなく、社会全体の活力と創造性を高めることにつながります。
それぞれの年代が持つユニークな視点や能力を活かし、世代を超えて協力し合うことで、より豊かで持続可能な社会を築くことができるのです。
誰もが安心して年齢を重ねられる社会は、私たち一人ひとりの意識と行動の変化から始まります。
私も、私の中にある「エイジズム」に囚われないよう、意識し、行動に移していきたいと思います。
読んでいただき、ありがとうございました。